財産目録の作成

法律上、相続時において財産目録を作成する義務はありませんが、相続財産目録を作成しておくとプラスとマイナスの財産が分かるので相続放棄や限定承認の判断に役立ちますし、相続税の申告が必要かどうかの判断にも役立ちます。

財産目録を作成して、ご家族で見てみるとそれぞれの記憶から新たな財産が発見されることもあります。

相続財産の全容が分からないと遺産分割協議もできませんので、相続財産全体を書き出すことはとても意味があります。

あらかじめ具体的に相続財産が把握されていれば、遺産分割協議をスムーズに行うことができるのです。

 

相続財産目録を作成するメリット

  1. 相続財産の全体像が一目で分かります。
  2. 相続放棄や限定承認をするべきかの目安になります。
  3. 相続財産目録を相続人全員に開示することにより、公平に遺産分割協議を進められます。
  4. 相続税申告が必要かどうかの判断の目安になります。

 

相続財産目録作成のポイント

  1. 相続財産目録には、相続発生時のすべてのプラス財産とマイナス財産をまず分けて記載し、さらに財産の種類ごと(不動産や預貯金、有価証券等)に分類して一覧表にします。
  2. 記載する金額は、相続開始時点である故人の死亡日を基準とします。預貯金ならその日時点での残高を記載することになります。また金額の根拠は、預貯金や有価証券については残高証明書を取得し、これを財産目録に添付するようにします。

 

相続財産目録の具体的な記入方法 

1 不動産

不動産に必要な項目は、所在・地番・地目や種類・地積や床面積・評価額・名義人です。

不動産については、さまざまな評価方法が存在します。実勢価格・路線価格・固定資産評価額などです。しかしながら実勢価格を正確に算定するためには、不動産鑑定士に依頼するなど時間と費用がかかるデメリットがありますし、路線価格は、路線価図からの算定は可能なのですが、土地の現況により各種の評価増減がなされることから、正確な数字を算定することはかなり難しいです。

なお相続税申告ではこの路線価格で不動産を評価します。一般的に多いのが固定資産税の課税明細書や固定資産評価証明書に基づく固定資産評価額を目安として相続財産目録に記載する方法です。

 

2 預貯金

預貯金に必要な項目は、普通預金か定期預金かといった預貯金の種類・銀行名・支店名・口座番号・金額・名義人です。金融機関で残高証明書を取得して相続発生日の残高を記載します。

定期預金は、相続発生日までの既経過利子を計算した残高証明書を発行してもらいます。

 

3 株式・投資信託

株式や投資信託に必要な項目は、証券会社・種類・銘柄・株式番号・数量・価格・名義人です。上場株式等は、相続発生日の株価で評価し記載して間違いではありませんが、税法上の規定で、

  • 死亡日現在の株価
  • 死亡月の平均株価
  • 死亡先月の平均株価
  • 死亡先々月の平均株価

の 4種類のうち、一番安い株価を評価額として記載することができます。

非上場株式の場合は評価額を調べるのが困難な場合がありますが、それでも株式評価をしなければならないので、その場合は税理士などの専門家に依頼する必要があります。

 

4 生命保険

生命保険に必要な項目は、保険会社・種類・保険証券番号・金額です。生命保険は、受取人が被相続人の場合に相続財産に含まれますので、財産目録に記載する必要があります。受取人が被相続人でない場合には相続財産に含まれませんので、財産目録に記載する必要はありません。ただし「みなし相続財産」として相続税の課税対象にはなります。

 

5 その他財産

その他財産に必要な項目は、種類・金額です。自動車・貴金属・美術品などがある場合には、財産目録に記載します。評価額がわからない場合には査定に出す必要があります。

 

6 負債

負債に必要な項目は、債務の種類・返済相手の氏名・未返済額・返済期日などを記載します。

 

財産目録記載例       

被相続人 〇〇〇 財産目録 (令和〇年〇月〇日)

1 不動産

番号 所在 地目等 面積 評価額 名義人 備考
新潟市〇〇町一丁目1番 宅地 100.12㎡ 1,000,000円 新潟太郎

令和1年度

評価証明書記載

合計金額   1,000,000円  

 

2 預貯金 現金

番号

金融機関名

種類

口座番号

金額(数量)

名義人

備考

1

〇〇銀行〇支店

普通

123456

100,000円

新潟太郎

 

2

〇〇銀行〇支店

定期

789012

200,000円

 

 

 

現金

 

 

300,000円

 

 

合計金額  

600,000円

 

 

 

3 株式 有価証券

番号

内容

金額(数量)

名義人

備考

1

〇〇証券〇支店 〇〇製薬 100株

100,000円

新潟太郎

 

合計金額  

100,000円

 

 

4 生命保険

番号

内容

金額(数量)

名義人

備考

1

〇〇保険会社 〇〇保険 証券番号123456

100,000円

新潟太郎

 

合計金額  

100,000円

 

 

5 負債

番号

内容(債権者)

金額(返済残金)

名義人

備考

1

〇〇ローン(株) 〇〇

100,000円

新潟太郎

毎月末日返済

合計金額  

100,000円

 

 

相続財産総額 金1,800,000円  負債 金100,000円

 

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